浮世絵、創作版画、新版画
浮世絵に感銘を受け、自身もコレクションをしていたゴッホ。棟方志功は幼少の頃ゴッホの絵に感銘を受け、「わだばゴッホになる」と
自身も20世紀美術の巨匠の一人に数えられるまでになりました。
彼は画家から版画家になりましたが、自身の版画を「板画」と呼びます。
木版の特徴を生かした作品作りをしているという自負から出た言葉でしょう。
棟方志功の作品は、日本の版画のジャンルでは 『創作版画』 と呼ばれます。
同じ木版である浮世絵が絵師、彫師、摺師にわかれて完全に分業体制で制作したのに対し、
創作版画は絵を描いて(自画)、彫って(自刻)、摺る(自摺)の工程をすべて一人で制作しています。
日本画、洋画に匹敵する版画の独自性を主張して、
山本鼎が作った「日本創作版画協会」からとられています。
明治になると開化絵、横浜絵といった明治維新や文明開化をテーマにした浮世絵が
作られましたが、明治も半ばになると写真や活版印刷の台頭から
手のかかる浮世絵は急速に廃れていきます。
表現手段として木版画を選んだのであれば
「ならば最初から最後まで、全部一人でやってしまおう!」となるのは自然の流れです。
それと並行するかのように、浮世絵技術が廃れていくことに危機感を感じ、
技術として残していこうとして制作された木版画を 『新版画』 と呼んでいます。
その時、版元として活躍したのが渡辺庄三郎です。
浮世絵と同じように、風景画、名所絵、美人画、役者絵、花鳥画などをテーマに
沢山の新版画を制作しました。
川瀬巴水、伊東深水、名取春仙、小原祥邨、笠松紫浪などなど・・・
日本画でも有名な作家さんが、渡辺木版で木版画を出版しています。