国際力と文化
ずいぶん前になるが、元大使だった方の講演を聞いた。なんでもまだドイツが東西に分かれていた頃に
大使をなさっていたとか。
大使時代、応接室に日本の版画を掛けていたが
その反応は二通りに集約できたという。
(ちなみにその版画は川瀬巴水の作品だったとか。
川瀬巴水の作品は日本のちょっと昔、懐かしさを思い起こすような
風景の作品が多い。)
①その版画作家の略歴、いつ頃のものか、
どうやって作成するのか、
などなど 興味を持って尋ねる。
②全く無反応。 無関心。
この反応 ①は外国人、②は日本人なんだそうだ。
日本人は経済的なことにはとても興味をもつけれど
残念ながら文化的なことには興味を示さないのがほとんど。
大使という仕事、国益と国益がぶつかりあう中
相手と交渉していく上で大事なことは何だと思いますか?
と質問された。
経済力、軍事力・・・などいろいろな意見がでたが
その方は 「それは文化です」 と断言された。
外国人にとっては、それが多色摺の版画だと聞けば
どういうものか興味を持つし、質問もする。
日本人にとっては、いつもまわりにあって、
取り立てて珍しいものではないかもしれないが
その作家を知っている、あるいは知らないれど、と
会話のとっかかりになる、はず、なのだが・・・
お金の力ではなく、喧嘩が強くて押し切るのでもない。
国際社会の最前線にいた方がこのように言われたことを
我々日本人はきちんと受け止めるべきでしょうね。