浮世絵収集
保永堂から『東海道五十三次』を出版、風景画家として不動の位置についた
広重晩年のシリーズである『名所江戸百景』。
趣向を変えて、横絵ではなく竪絵。
そして広重の今までのどのシリーズよりも色数が多い多色摺。
背景にも、全面に色をのせています。
以前にも少し書きましたが、
名所江戸百景(以下 『江戸百』)は
視点の位置が特殊で、非常に面白い。
またクローズアップ手法も取り入れ、
今までの作品とは趣きを異にしています。
また、この江戸百ほど初期摺と後期摺の違いがはっきり出た
作品もないでしょう。
色彩は艶やかですが、丹念なぼかしによって
すばらしく奥行きのある、しっとりとした初期摺が
だんだんと奥行きのない、平面的な作品に・・・
このシリーズも、よく売れたんでしょうね。
初期摺か後期摺か、それに保存状態も加わって
同じ図柄でも評価は異なります。
浮世絵収集の良いところは、
例えば欲しい図柄の作品が
評価は違うけれど複数枚あったとき、
どれを選ぶか 「自分で」 選択できることです。
「刷り」を重視するか、「保存状態」を重視するか、
それはあなた自身の好みです。
どちらがよくて、どちらが悪い・・・ということは
ありません。
選択肢が多いほど収集も楽しくなると思いませんか?