広重 東海道五十三次(保永堂版)
浮世絵の世界では、通称「保永堂版」で話が進んでいきますが、「保永堂版」とはなんでしょうか?
浮世絵は、版元、絵師、彫師、摺師の共同作業によってうまれます。
版元とは今でいう出版社のようなもので、保永堂はその版元のひとつ。
その保永堂から出版された東海道五十三次のことを
通称「保永堂版」と呼んでいます。
東海道シリーズを含め、名所絵がもてはやされるようになったのは
江戸後期、19世紀も後半になって社会が安定、
おかげ参りなど一般人でも比較的簡単に旅に出ることができるように
なったからではないでしょうか。
道中記や双六も次々と出版され、特に十返舎一九の「東海道中膝栗毛」(享和2年 1802)は
大人気となりました。
旅に出かけられない人も旅に出た気分になる、
あるいは旅の記念やお土産として、
浮世絵の名所絵はうってつけだったのです。
ではなぜ数々の名所絵の中で、広重の東海道五十三次、
特にこの保永堂版が人気を博し、爆発的に売れたのでしょうか?
まず旅(観光)としての東海道に非常に人気が高まっていたこと。
一枚だけではなく、続き絵として出版した版元の企業努力。
東海道シリーズで、大判横錦絵として出版されたのは初めてだったこと。
そして、名所案内でありながら単なる名所案内にとどまらない、
広重の独自の表現力が組み合わさり、まさに「広重ワールド」とも
いえるイマジネーション豊かな作品が生まれたのです。
ですから、雪の積らない、比較的暖かな場所に雪を降らせたり、
山の位置が変わっていたり・・・もするわけです。
だって「広重オリジナルの東海道」ですから。
と、いうわけで、今後 Web Museumで順次ご紹介していきますので
お楽しみに
